【助産師が解説】母乳育児とミルク育児、どっちがいいの?〜迷うママに伝えたいこと〜

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妊娠・出産を経て、いざ育児の始まりですが、その中で特に気になるのが、母乳育児についてではないでしょうか?

母乳で育てたい?それともミルク?はたまた母乳とミルクの併用の混合育児?

そもそも、母親の希望のみで、その想いが叶うのでしょうか?

今回は「母乳育児とミルク育児」についてお話ししたいと

はじめに:授乳に「正解」はあるの?

赤ちゃんを迎えたばかりの頃、

「母乳が出ないのはダメなこと?」

「ミルクに頼るのって悪いこと?」

そんな風に悩む方がとても多いです。

でも、大丈夫。

授乳に”絶対の正解”はありません。

大切なのは、赤ちゃんとママが無理せず、安心して過ごせることです。

赤ちゃんとの生活の中で、自分の思いを見つめていけばいいのです。

母乳育児のメリットと気をつけたいこと

初乳には免疫グロブリンが豊富

このことについてはよく聞く話ですよね。では、どの程度免疫は影響するのでしょうか。

・免疫成分の濃度と効果

初乳に含まれる免疫グロブリンAは成乳の約3倍濃度が高く、消化管や呼吸器の粘膜を病原体から保護します。この抗体は、母親が過去に経験した感染症に対する免疫を赤ちゃんに直接伝達します。

白血球が初乳の細胞の最大3分の2を占め、細菌やウイルスを無力化する抗体を生成します。これにより、腸管感染症や下痢のリスクが低下します。

・疫病予防効果の具体例

中耳炎の発症率が母乳栄養時の方が低いことが研究で示されています。

消化器感染症に対する防御効果が顕著で、初乳を摂取した赤ちゃんは下痢や腸炎の発生率が低いとされています。

新生児黄疸の予防効果も確認されており、胎便排泄を促進する作用が働きます。

・長期的な影響

腸内細菌叢の形成が遅れ、免疫システムの発達に影響を与える可能性。

生後6ヶ月までの感染症罹患率が高まる傾向がある。

ただし、これらの差異は環境要因によっても変化します。現在の育児環境ではミルクも栄養面で改良されていため、絶対的な優劣ではなく相対的なリスク低減効果と捉えるべきです。

赤ちゃんの消化吸収にやさしい

・赤ちゃんの消化機能に適した成分構成

母乳は赤ちゃんの未熟な消化機能でも消化・吸収しやすい成分バランスになっています。

タンパク質や脂肪が消化しやすい形で含まれており、胃腸や肝臓、腎臓への負担が少ないです。

・消化酵素の存在

母乳にはリパーゼなどの消化酵素が含まれており、特に消化しにくい乳脂肪の分解・吸収を助けます。

・アレルギーや消化不良を起こしにくい

人間由来のタンパク質で構成されているため、アレルギーや消化不良を起こしにくいです。

牛乳由来の粉ミルクに比べて、赤ちゃんの体に合いやすいです。

・免疫物質や善玉菌を増やす成分を含む

免疫物質(IgA、ラクトフェリンなど)が含まれ、腸内環境を整え、感染症予防や善玉菌の増加にも繋がります。

これらのことにより、赤ちゃんの未熟な消化管でも負担なく消化・吸収できるように、栄養素・酵素・免疫成分が最適なバランスで含まれているため、消化吸収にとても優れています。

ママの子宮収縮を促し、産後の回復にも役立つ

・ホルモン「オキシトシン」の働き

赤ちゃんが乳首を吸う刺激によって、母親の脳から「オキシトシン」というホルモンが分泌されます。

オキシトシンは子宮の筋肉を収縮させる作用があり、妊娠・出産で大きくなった子宮を元の大きさに戻す「子宮復古」を促進します。

・産後回復への効果

子宮収縮が進めことで、出血(悪露)が早く治り、産後の回復がスムーズになります。

また、オキシトシンの分泌は母親の精神的な安定にもつながり、産後の心身の健康にも良い影響を与えます。

赤ちゃんへの栄養だけでなく、オキシトシンの分泌による子宮収縮を通じて、母体の産後回復を助ける重要な役割を果たしています。

注意したいこと

・母乳が安定するまでには時間がかかることがある

赤ちゃんもママもお互い、授乳になれていくことには時間がかかります。

また、母乳の分泌は、授乳を始めればすぐに起こるものではありません

繰り返し授乳をしていくことにより、母乳の分泌量が増えてきます。

産後の赤ちゃんは、その子その子で違います。

母乳を続けていきたい場合は、出産後に赤ちゃんとママの状態を見てもらいながら続ける方が良いです。

・乳頭の痛みや、乳腺炎などのトラブル

乳頭の形状や伸展、柔らかさなど個人差があります。

赤ちゃんの吸啜力は強く、思いの外辛い思いをすることもあります。

妊娠中からの、乳頭マッサージを行なっていたり、準備をしていることで、トラブルを回避できることもあります。

また、母乳の分泌が良い人の中には、乳腺炎になる人もいます。

繰り返す乳腺炎で、授乳を辛く思うこともあります。

・夜間授乳などでママの体力が削られやすい

出産も個人差があります。

前駆陣痛や陣痛に何時間もかかり、ようやく出産。

出産後も出血が多くなったり、後陣痛がひどく、起き上がれない。

ママの体調は、それぞれです。

そんな中、授乳時間は待ってくれません。

ミルク育児のメリットと注意点

ミルク育児のいいところ

・栄養バランスが安定しており、体重増加も管理しやすい

ママが気になるのは、赤ちゃんはちゃんと飲んでいるのか?

ということです。ミルクだと、量が分かり、体重増加も管理しやすくなります。

・パパや祖父母など、家族みんなで授乳を分担できる

父親の育児休業取得も増えてきて、パパの育児参加も珍しくないものになってきています。

ミルクをあげる時間が、パパと赤ちゃんの愛着形成にとても良い時間になることもあります。

また、兄弟がいる場合は、上の子の家族形成に役割を持たせるという面では良い時間になります。

・外出や保育園利用、預ける時にスムーズ

母乳育児では、授乳室を探す手間が省けます。

ママも、赤ちゃんを預けて出かけることもしやすいというメリットもあります。

注意点

・消毒の手間がかかる

・哺乳瓶の種類や乳首の形が合わないこともある

・月齢や体重によってミルクの量や濃度に気をつける必要がある

混合育児もOK!一番大切なのは「続けられる方法」

「母乳は出にくいけど、少しはあげたい」

「夜間はミルクにして休息を取りたい」

こんな風に、”母乳とミルクを組合せる”混合育児を選ぶママもたくさんいます。

これは、決して「中途半端」なんかじゃありません。

ママにとって最善のバランスを見つけることが、一番の正解です。

知ってほしい!「D-MER(授乳時不快感反射)」について

「授乳中、なんとも言えない気持ちの悪さやイライラを感じる」

「授乳のたびに涙が出そうになる」

そんな経験・感覚はありませんか?

それはD-MER(Dysphoric Milk ejection Reflex)かもしれません。

D-MERとは?

母乳の出始めに、脳内ホルモン(ドーパミン)が急激に低下することで、

一時的に「ネガティブな感情」が湧いてしまう生理的な現象です。

D-MERは病気じゃない。でも、辛い。

沸き起こる感情は、決して「気のせい」ではなく、生理的に起こるもの。

数分でおさまるけれど、毎回となると心がしんどいもの。

医療者の中でも、最近は広まってきていますが、知られておらず、理解してもらえず、

孤独を感じるママも多いです。

対処法は?

「これはD-MERだ!」と理解するだけでも楽になります。

ミルクに切り替えたり、部分的に混合にするもの◎

また、専門家(助産師・保健師など)に相談を!早めに対処することで、

育児を前向きに始めることができます。

おわりに:育児に”正解”はない。でも、あなたの選択は間違っていない

母乳でもミルクでも、混合でも。

赤ちゃんが満たされ、ママが笑えていることが、一番のゴールです。

私がいつもママたちに伝えている事は、

大人になって、母乳育児だった?ミルクだった?と聞かれることなんてないよ!

大きく育っていけば、どんな方法でも問題ないんです。

要は、ママや家族が赤ちゃんにたくさん笑顔を向けていられる育児なら、

なんでもいいんです!

あなたらしい育児を応援しています

Nazuna Blogでは、ママの不安や迷いに寄り添いながら、

助産師としての知識もお届けしていきます。

「こうでなきゃいけない」と思い詰めるよりも、「こんなやり方でもいいんだ」と思えるように。

今日も育児、お疲れ様です。

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